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医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚について ~医療法人の出資持分権の財産分与~

  • コラム

財産分与とは

離婚に伴う財産分与とは、夫婦で婚姻期間中に築き上げてきた財産を、離婚に際して、夫、妻それぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。

離婚に伴う財産分与には、以下のとおり、
①清算的財産分与
②扶養的財産分与
③慰謝料的財産分与
の3つの類型があります。

清算的財産分与

婚姻期間中に夫婦で形成した財産は、夫婦の共有財産であるため、離婚時にその共有財産を清算することになります。

清算の対象となる共有財産には、現金、動産、不動産、銀行預金、株式等が含まれます。

ただし、夫婦が婚姻以前から持っていた財産や、婚姻後に相続により得た財産等については、夫と妻が協力して夫婦共同生活の中で形成した財産とはいえないので、清算的財産分与の対象とはなりません。

扶養的財産分与

離婚に伴って、従前の生活レベルが維持できなくなってしまう配偶者に対してなされる財産分与です。

離婚によって経済的に弱い立場に置かれる妻または夫が、離婚後、経済的に自立するために必要な期間、援助する趣旨で支給されることが一般的です。

慰謝料的財産分与

夫または妻の不貞行為等の有責行為によって夫婦が離婚に至った場合、その精神的な苦痛を慰謝するための慰謝料を相手方に請求することができる場合があり、それを考慮した場合の財産分与を慰謝料的財産分与といいます。

夫が医療法人の経営者であり、医療法人の出資持分権を持っている場合、その出資持分権もまた夫婦の共有財産となりうるため、結果として、清算的財産分与の対象となることがあります。

では、医療法人の出資持分権とはどのような性質の財産なのでしょうか。

医療法人の出資持分権とは

医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚について~医療法人の基礎知識で説明したとおり、平成19年の医療法改正以後に設立された社団たる医療法人には出資持分権がありません。

しかしながら、それ以前に設立された医療法人には出資持分権があり、現在もなお多くの医療法人には出資持分権があります。

そして、出資持分権は、社団たる医療法人に出資した者が、その医療法人の資産に対し、出資額に応じて持つ債権をいい、そのため、出資持分は、経済的価値を有する財産権であって、原則として譲渡性が認められ、また、離婚の際には財産分与の対象ともなり得ます。

なお、出資持分権は、株式会社における株式と異なり、社員の地位と結合した概念ではありません。

また、社団たる医療法人において、出資持分を有する者は、その医療法人の定款の規定に基づいて、自らの出資持分の払戻しを求めることができ、その権利のことを出資持分の払戻請求権といいます。

出資持分の払戻請求権に関する定款の規定としては、「社員資格を喪失した者は、 その出資額に応じて払戻しを請求することができる」という趣旨の規定が設けられている場合が通常であり、出資持分の払戻請求権は、出資をした医療法人の社員が退社した際に発生するのが一般的です。

医療法人の出資持分権の評価

では、その出資持分権は、財産分与にあたってどのように評価されるのでしょうか。

この点、上記大阪高裁平成26年3月13日判決では、その医療法人の純資産価額をベースに医療法人の出資持分権の財産的評価を加え、清算的財産分与の対象として認めました。

なお、その詳細については、
医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚について~離婚に伴う財産分与において、医療法に基づいて設立された医療法人に係る夫婦名義の出資持分のほか、夫の母名義の出資持分をも財産分与の基礎財産として考慮し,医療法人の純資産価額に0.7を乗じた金額を出資持分の評価額として財産分与額を算定した事例を参照してください。

医療法人の出資持分権についての夫と妻の寄与割合

離婚する夫と妻の間で夫婦共有財産を財産分与にあたっては、原則として、寄与割合を等しいものとみて、2分の1ずつの割合に応じて財産分与すべきと考えられています。

しかしながら、夫が医師であり、一般に比して高額な収入を得ていた場合、その基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成され、かつ、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合などには、そうした事情を考慮して寄与割合が加算されることもありえます。

実際、上記の裁判例では、夫が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻前から個人的な努力をしてきたことや、医師の資格を有し、婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して、夫の寄与割合を6割、妻の寄与割合を4割と判断しました。

ただ、この寄与割合をどのように判断するかについては、各夫婦の個別の事情に応じてなされるものであって、むしろこの裁判例の判断は例外的なものにあたるのかもしれません。

医療法人の資産

このように医療法人の出資持分権が財産分与の対象となるとして、医療法人そのものの資産については財産分与の対象となるのでしょうか。

この点については、医療法人の保有資産については、あくまでその法人の資産であって、夫と妻が個人間で清算して分配すべき性質のものではないため、財産分与の対象とはなり得ないと考えら得れます。