財産分与に期間制限はある?離婚後に後悔しないために
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離婚後の新生活をスタートさせるにあたり、お金の問題は非常に重要です。特に、夫婦で協力して築き上げた財産を分け合う「財産分与」は、その後の生活設計を大きく左右します。
この財産分与には、請求できる期間に制限があることをご存知でしょうか。離婚後に「もっと早く知っておけば…」と後悔しないために、財産分与の請求期限について正しく理解しておくことが大切です。
このコラムでは、財産分与の請求期限に関する基礎知識から、期限が迫ったときの対処法まで、分かりやすく解説します。
目 次 [close]
財産分与の時効に関する基礎知識
財産分与を請求できる期間は、現行法では離婚の時から2年以内と定められています(なお、後述のとおり、令和6年改正民法において、財産分与の請求期間は5年に伸長されることが決まっています。)。この期限は、除斥期間であると解されています。最高裁判所の判例もこの立場をとっています。
令和6年改正民法との関係
令和6年改正民法において、財産分与の請求期間は5年に伸長されることが決まっており、同改正民法の施行日は、令和8年4月1日となっています。
そのため、施行日前(令和8年3月31日まで)に成立した離婚については、現行法が適用され、財産分与は離婚の時から2年以内に請求する必要があります。
他方、施行日以後(令和8年4月1日以降)に成立した離婚については、改正法が適用され、財産分与は離婚の時から5年以内まで請求できるようになります。
除斥期間の考え方
除斥期間とは、法律で定められた一定の期間、権利者が権利を行使しないことによって権利が消滅する制度です。除斥期間は、権利関係を画一的かつ絶対的に安定させるという公益的な要請や、法律関係の速やかな確定を目的としています。このような趣旨から、除斥期間においては、時効制度と異なり、完成猶予や更新(中断)は認められておりません。また、除斥期間は、当事者による援用を必要とせず、期間の経過によって当然に権利が消滅します。
起算点とカウント
財産分与の請求期限である2年のカウントは「離婚の時」から始まります。この「離婚の時」は、離婚の方法によって異なります。
- 協議離婚の場合:市区町村役場に離婚届を提出し、受理された届出日
- 調停離婚・和解離婚の場合:家庭裁判所で調停・和解が成立した日
- 裁判離婚の場合:離婚判決が確定した日
正確な離婚日を確認するには、戸籍の記載を確認するとよいでしょう。
時効制度との相違に注意
上述のとおり、財産分与の請求期間は、除斥期間であると解されており、時効期間ではありません。
時効制度では、催告を行うと、その時から6か月間、時効の完成が猶予されますが(民法150条1項)、除斥期間では、このような制度はありません。つまり、相手方に対して書面で財産分与を請求しただけでは、2年という除斥期間の進行を止めることはできないのです。この点を誤解していると、気づいたときには手遅れになってしまう可能性があるため、注意が必要です。
請求期限が迫っている時の対処法
財産分与の話し合いがまとまらないまま、2年の請求期限が近づいてきたらどうすればよいのでしょうか。権利を失わないために、すぐに行動を起こす必要があります。
調停申立て
最も取りやすい方法は、請求期限が過ぎる前に家庭裁判所へ「財産分与請求調停」を申し立てることです。期限内に調停の申立てを行えば、その後の調停や審判の手続きの途中で2年の期間が経過してしまっても、財産分与を請求する権利は失われません。話し合いでの解決が見込めない場合や、相手が引き延ばしを図っていると感じたら、迷わず調停の申立てを検討しましょう。
審判申立て
財産分与の請求期限が過ぎる前に、財産分与請求審判を申し立てることも考えられます。もっとも、原則として調停前置主義が採られています。
証拠の確保
調停や審判を適切に進めるためには、分与の対象となる財産の存在を裏付ける資料の提出が不可欠です。夫婦が婚姻中に協力して築いた財産(預貯金、保険、不動産など)が対象となります。離婚後に月日が経過すると、資料の入手が困難になる可能性があります。離婚後に後悔しないためにも、夫婦共有財産の存在を裏付ける資料を早めに取得しておくことが望ましいです。
書面化の重要性
財産分与について当事者間で合意ができた場合は、その合意内容を書面に残しておくことが重要です。
離婚協議書の作成
夫婦間の話し合いで決まった財産分与の合意内容は、「離婚協議書」などの契約書として書面に残すことが望ましいです。口約束だけでは、後になって「言った、言わない」という水掛け論になり、合意の存在を証明することが難しくなります。書面を作成することで、合意内容が明確になり、後の紛争を予防することにもなります。
公正証書の活用
財産分与などの金銭給付が長期にわたる場合には、公正証書を作成することをお勧めします。公正証書を作成する際に「強制執行認諾文言」を入れておくと、相手が合意した内容どおりの支払いを怠った場合に、裁判を起こすことなく、相手の給与や預貯金などを差し押さえる手続き(強制執行手続き)をとることができます。
まとめ
財産分与は、離婚後の人生を経済的に支えるための大切な権利です。その権利を失って離婚後に後悔することのないよう、請求期限を意識し、速やかに手続きを進めることが大切です。
また、離婚がいつ成立したかによって、財産分与の請求期限について、2年か5年かのどちらの期間が適用されるかが変わりますので、注意が必要です。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
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