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会社経営者(社長)を夫にもつ妻の離婚ついて

  • 会社経営者(社長)
会社経営者(社長)を夫にもたれている方で、離婚をお考えの方もおられるかと思いますが、会社経営者との離婚は、特有の問題を抱えることもあります。

以下では、社長を夫にもつ夫婦に生じうる離婚問題について、説明します。

離婚の合意について

夫婦間での離婚の合意に基づいて離婚届を提出することにより、離婚を成立させることができます。この点については、会社経営者を夫にもつ夫婦と、その他の夫婦との間に違いはありません。

親権者の指定について

未成年の子がいた場合、離婚を行うにあたり、子の親権者を指定しなければなりません。

親権者は、夫婦の合意により指定することができますが、夫が会社経営者の場合、特に親族で経営されている会社である場合に、親権の争いは熾烈になりがちです。

「子どもを会社の跡継ぎに」と考えることが多いため、子どもの親権で争いが生じやすいのです。

協議や調停で親権に折り合いがつかない場合は、裁判で親権を争うことになります。

家庭裁判所では、親の事情と子の事情の要素を前提として、親権者・監護者の適格性を判断していますが、そのための基準として、母性優先の基準、監護の継続性の基準、子の意思の尊重、きょうだい不分離、面会交流の許容などの考え方が取られています。

その事案を丁寧に評価し、父母のどちらが親権者として相応しいかを判断することになりますので、「会社の跡継ぎが必要だから」という理由だけで子どもの親権の取得について、母親側が不利になることはないと考えてよいでしょう。

養育費について

現在の家庭裁判所及び高等裁判所等の実務においては、権利者・義務者の各収入、子の数、年齢に応じた養育費の算定表に従い、養育費の算定がなされています。

夫が社長の場合、夫は、会社から、役員報酬を受領していることになりますが、役員報酬は給与に該当するとして、給与所得者の年収の欄を確認して、養育費を算定することになります。

しかしながら、算定表は、公立の学校に進学していることを前提として作成されているため、子どもが私立学校に通っている場合、養育費の取り決めについて、争いが生じやすいといえます。

子どもが私立学校に通っている場合

私立学校の学校教育費については、「義務者が子の私立学校への進学に同意しているか、当事者の学歴、職業、資産、収入、居住地域の進学状況等に照らして私立学校への進学が相当であると認められる場合においては、適切な金額を加算することがある」と考えられています。

子どもが塾に通っている場合

塾や予備校費用についても、私立学校と同様に、義務者の承諾の有無、義務者の収入・学歴・地位、当事者の従前の生活状況、現在の生活状況等に基づき判断されることになりますが、私立学校の学費よりも、加算の判断は慎重になると考えられます。

成人した子どもが在学中の場合

会社経営者の子どもであれば、子どもが大学を目指している、あるいは現在大学にて在学中であるとの場合が多いかと思いますが、子どもが成人後も大学で学業を続けている場合、子どもが成人したとしても、親からの扶養を必要とする「未成熟子」に当たり、婚姻費用や養育費の支払いを請求できる余地があります。

財産分与について

社長を夫にもつ妻の離婚問題では、財産分与において特有の問題点があります。

以下、特に問題になりやすい点について、ご説明いたします。

夫が会社経営者の場合、事業用資産は財産分与対象財産ですか?

会社の財産については、会社と夫個人が別人格であるため、財産分与の対象とならないのが原則です。

しかし、会社名義の財産であっても、実質的に夫婦の財産と認められるような場合には、例外的に財産分与の対象と認められる場合があります。

例えば、夫と妻のみが出資する会社であり、会社の資産と夫婦の資産とが明確に分離されずに管理されていると認められるような場合です。

夫が経営している会社の従業員として妻が働いている場合、離婚に伴い、雇用関係は終了しますか?

離婚の事実のみを理由として、雇用関係を当然に終了させることはできません。

雇用関係を終了させるためには、離婚手続きとは別に、退職の手続きを行う必要があります。

なお、離婚のみを理由とした解雇は、合理的な理由がないと考えられるため、解雇無効などを主張することができますが、離婚後に同じ会社で働くことは、現実問題として難しいと思われますので、離婚の話し合いの際に、雇用契約をどのようにするのかについても、夫婦間でしっかりと話し合いを行われることをお勧めします。

夫が自社株式を保有している場合、財産分与はどのように行えばよいですか?

夫が社長の場合、自社の株式を保有している場合が少なくありません。

そして、婚姻後に自社の株式を取得した場合、自社の株式も夫婦共有財産として財産分与の対象になりえます。

しかし、夫が自社株式を離婚相手である妻に分与することは、会社の経営に大きな影響を与えることになりますので、妻が自社株式の分与を希望したとしても、夫としては、離婚後の妻が会社経営に関与することを回避するため、自社株式の分与を拒絶する場合が多いものと思われます。

また妻においても、会社の経営に携わりたいなどの希望があるのであれば、株式の分与を受けることにメリットがありますが、そのような希望がないということであれば、自社株式を保有することにメリットがあるとは考えにくいです。

そのため、妻においては、自社株式の分与を受ける代わりに、自社株式の価値を評価し、その評価額の2分の1を金銭で受領する方法での分与を検討するなどの方法が考えられます。

年金分割について

夫が会社経営者であり、厚生年金に加入している場合は、妻は、年金分割の手続きを取ることが可能です。

なお、夫が厚生年金に加え、私的年金に加入している場合、当該私的年金は年金分割の対象とならず、財産分与の中で解決すべき問題となります。

離婚慰謝料について

会社経営者の夫が不貞行為をした場合、離婚慰謝料は高額になりますか?

慰謝料の額は、様々な事情を総合して検討して決められると考えられており、当事者の社会的地位や支払い能力も慰謝料額を判断する事情となりえます。

しかし、昭和40年代までの裁判例では、当事者の社会的地位や支払い能力について慰謝料算定の直接の事情として考慮されることが多かったものの、近時の裁判例では、これらの事情を慰謝料算定の考慮事情に直接入れないことが多くなっております。

夫が社長である、という事情のみでは、会社経営者以外の者が不貞行為をした場合と比べ、離婚慰謝料が高額になるとは考えにくいでしょう。

その他、会社経営者の夫を持つ妻に生じうる問題について

妻の実家が代々会社を経営しており、夫と妻の両親が養子縁組をしている場合、離婚が成立すると養子縁組が解消されますか?

夫と妻の離婚により直ちに妻の両親と夫の養親子関係が終了するわけではありません。

養親子関係を終了させるためには、夫または妻の両親が、別途離縁の手続きを行う必要があります。