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財産分与の割合はどう決まる?夫婦の貢献度と判例

  • 財産分与

離婚する際に決めるべきことの一つに「財産分与」があります。財産分与は、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を分ける手続きです。財産分与で得られる財産は、離婚後の新しい生活の経済的な基盤となりますので、分与の割合がどのように決まるのかは大きな関心事でしょう。このコラムでは、財産分与の割合を決める上での基本的な考え方(2分の1ルール)、割合が修正される例外的なケース、そして実際の判例ではどのような判断がされているのかを、分かりやすく解説していきます。

財産分与の割合の基本

2分の1が原則

財産分与の割合は、夫婦が財産形成にどれだけ貢献したか(寄与度)によって決まりますが、実務では「2分の1ルール」という考え方が主流です。これは、特段の事情がない限り、夫婦の貢献度は平等であるとして、財産を半分ずつに分けるというものです。この原則は、夫婦が共働きであるか、一方が専業主婦(主夫)であるかを問いません。

割合が修正される例外的なケース

「2分の1ルール」が実務上の原則である一方で、次のような事情がある場合には、割合が修正されることがあります。

一方の特別な能力や努力による高額資産の形成

医師、弁護士、経営者など、特別な資格・才能・努力によって通常を超える収益を上げた場合には、その成果を得るための個人的努力を考慮し、寄与度をやや高めに評価することがあります。ただし、単に有資格者である、あるいは高収入であるというだけでは、直ちに割合の修正の理由とはならず、その資格や能力がなければ達成不可能な程度を相当に超える蓄財があった場合に限られると考えられています。

夫婦の役割分担の著しい偏り

例えば、

  • 夫婦の一方が就労も家事労働もすべて引き受け、他方の配偶者が何もしていないような場合
  • 共働きでありながら家事・育児の一切を一方のみが担っている場合

など、協力扶助義務の分担が著しく不均衡であると評価されるケースです。

このように、婚姻中の財産形成において、一方が他方より明らかに多くの資金・労力を提供し、協力関係のバランスが実質的に偏っていると認められるときには、割合が修正されることがあります。

割合が修正された事例

医師である夫の寄与割合を6割とした事例(大阪高判平成26年3月13日)

夫が医療法人を経営する医師で、分与対象財産が3億円を上回る事案です。

同事案では、夫が医師資格を得るための婚姻前からの個人的な努力や、婚姻後にその資格を活用し多大な労力を費やして高額収入を得たことが考慮され、夫6:妻4の割合が合理的と判断されました。

一級海技士である夫の寄与割合を約7割とした事例(大阪高判平成12年3月8日)

夫が一級海技士の資格をもち、1年のうち6か月から11か月という長期間の海上勤務を行うことにより高額な収入を得ていた事案です。

同事案では、資格を取得したのは夫の努力によるものというべきであり、資格を活用した結果及び海上での不自由な生活に耐えたうえでの高収入であれば、夫の寄与割合を高く判断することが相当であるとされ、夫7:妻3の割合と判断されました。

家事労働と高収入を両立した妻の寄与割合を6割とした事例(東京家審平6年5月31日)

夫が画家、妻が作家の夫婦で、妻の所得が夫の何倍もあり、さらに約18年間にわたり妻が専ら家事労働に従事していた事案です。

夫婦の共同生活についての費用の負担割合や収入等を総合的に考慮し、妻6:夫4の割合が相当と判断されました。

まとめ

財産分与の割合は、夫婦の財産形成に対する貢献度を基準として定まりますが、実務では特段の事情がない限り、「2分の1ルール」によって、原則として半分ずつの分与となります。

もっとも、婚姻中の財産形成が一方の特別な資格・能力・努力に大きく依拠している場合や、夫婦間の協力扶助・役割分担が著しく不均衡である場合などには、具体的事情を総合考慮して割合が修正されることがあります。

実際の裁判例でも、このような事案では、財産分与割合について、6:4や7:3といった修正がなされています。

そのため、財産分与を行うにあたっては、2分の1ずつの原則を前提としつつ、分与割合の修正を基礎付ける具体的な事情とその事情を裏付けることのできる証拠の有無を検討することが重要です。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。