退職金は財産分与の対象?知っておきたい判断基準
- 財産分与
離婚を考えたとき、大きな財産の一つである「退職金」が財産分与の対象になるのか、気になる方も多いでしょう。特に、まだ受け取っていない将来の退職金については、どのように扱われるのか分かりにくい点も多いかと思います。
このコラムでは、退職金が財産分与でどのように扱われるのか、その基本的な考え方から、具体的な評価方法、実際の判例まで、分かりやすく解説していきます。
退職金は財産分与の対象となるか
退職金の性質
退職金は、単なる恩恵的な給付ではなく、これまでの勤務に対する報償や、給与の後払いとしての性格を持つと考えられています。退職金は、この「労働の対価」という側面から、夫婦が協力して築いた財産の一部と評価されることが多いです。
退職金の財産分与対象性
上述の退職金の性質から、退職金は、受給済みなら原則として財産分与の対象となり、未支給の場合であっても支給の蓋然性が高いといえる場合には財産分与の対象となると考えられています。財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して形成・維持してきた財産を清算するという考え方ですが、退職金の形成にあたり、配偶者の貢献があると評価されるためです。
受給時期ごとの扱い
離婚前に受給している場合
離婚前にすでに退職金が支払われている場合、そのお金が預金などの形に変わっていても、預金などが、夫婦の共有財産として財産分与の対象とされるのが一般的です。
離婚後に受給する見込みがある場合
離婚後、将来受給が見込まれる退職金も、財産分与の対象となり得ます。勤務先の性質や退職金規程の存在などから、将来退職金を受け取ることができる可能性が高いと判断された場合には、財産分与の対象として検討されます。
特に、定年退職が近い将来に迫っている場合、将来受給する退職金が財産分与の対象となる蓋然性が高いと判断されやすいです。例えば、退職まで6年というケースや、10年後であっても勤務先が安定している場合や公務員の場合には、財産分与の対象となる可能性が高いとされています。
ただし、会社の倒産、本人の病気や事故、懲戒解雇といった不確定な要素も多いため、具体的な状況に応じて評価方法が調整されることもあります。
評価方法
財産分与の基準時(別居時等)に自己都合退職したと仮定した場合の退職金額を基準とする方法
実務上は、この方法を採用することが多いです。
定年退職時に受給する予定の退職金額から、中間利息を控除して現在の価値に換算する方法
将来受給する退職金を離婚時に一括で清算する場合、将来の価値を現在の価値に割り引いて計算する必要があります。これを「中間利息の控除」と呼びます。
実務では、複利計算であるライプニッツ係数などが用いられることがあります。
将来、退職金が支給された時点で、定められた計算式や割合に基づいて支払う方法
財産分与を支払う側に資力がない場合や、退職金の支給時期が近い場合などに、この方法を用いることもあります。
勤続年数の按分
退職金の全額が財産分与の対象になるわけではありません。婚姻期間(同居期間)に相当する部分のみが財産分与の対象となります。具体的な評価方法としては、以下のような計算が用いられます。
退職金額 × (同居期間 ÷ 勤続期間)×分与割合(多くの場合は2分の1)
この方法で、婚姻生活での貢献度に応じた分与額を算出します。ただし、勤続年数によって退職金の算定率が変わる場合は、より複雑な計算が必要になることもあります。
資料の集め方
退職金の評価方法を検討するためには、まずその存在と金額を証明する資料が必要です。具体的には、勤務先の「就業規則」や「退職金規程」を確認することが第一歩です。これらの規程には、退職金の計算方法や支給条件が定められています。また、勤務先に依頼して退職金見込額証明書などを発行してもらえるか確認することも有効です。
判例
退職金を財産分与の対象財産とした判例
判例では、将来受給する退職金を財産分与の対象とするケースが多く見られます。例えば、以下のような事例があります。
- 夫が退職時に受け取る退職金のうち、婚姻期間に対応する部分の4割を妻が受け取るべきとした判例(東京高判平10.3.13)
なお、分与割合は事案の事情により調整されます。 - 将来の退職金を現在の価値に計算し直し、離婚時に支払うよう命じた判例(東京地判平11.9.3)
- 別居時に自己都合退職したと仮定して分与額を算定し、支払いは実際の退職時とするとした判例(広島高判平19.4.17)
退職金を財産分与の対象財産外とした判例
- 夫の勤務先が別会社に合併され解散するのに伴い、夫に対して金員が支払われたが、この金員は、向こう2年間の給与を補填するという労働者の生活保障の趣旨で支給されたものであり、財産分与の対象となる退職金や功労金には該当しないと判断された判例(東京家八王子支審平 11.5.18)
なお、退職金というものの性質上、労務提供の事後的対価としての性質を完全に否定できるケースは多くないため、この判例は、やや特殊なケースといえるでしょう。
まとめ
退職金の財産分与は、すでに受け取っているか、将来受け取る見込みかによって扱いが異なります。特に将来受給する退職金については、不確実な要素も多く、評価方法や支払方法について様々な考え方があります。ご自身の状況に合わせてどのような方法が最適か、慎重に話し合いを進めることが大切です。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
- 2025.12.22
財産分与と子どもの生活費は別?混同しやすいポイント解説 - 2025.12.15
財産分与に期間制限はある?離婚後に後悔しないために - 2025.12.08
財産分与の割合はどう決まる?夫婦の貢献度と判例

