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離婚時に相手が財産を隠していると疑われる場合の対応方法

  • 財産分与

離婚における財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を清算する手続です。そのため、適正な財産分与を行うためには、原則として別居時を基準に、双方の預貯金、不動産、保険、株式等の財産状況を資料に基づいて明らかにする必要があります。しかし、一方が財産を隠匿したり、資料の開示に応じなかったりする場合には、弁護士会照会、家庭裁判所の調査嘱託、令和8年4月1日施行の改正法により導入された情報開示命令などの法的手段を検討することになります。また、財産の隠匿が推認される場合には推計による認定が行われることもあります。財産分与の請求には期限があるため、適切な調査と手続きを迅速に進めることが重要です。

財産開示と隠匿への対応

離婚の際、当事者は分与対象財産を確定するための基準時(原則として別居日)に有していた自己の財産を明らかにする必要があります。財産分与は夫婦の共有財産を清算する手続きであるため、名義にかかわらず誠実な開示が必要です。しかし、実際には自身の名義の財産を任意に開示しない当事者も存在します。相手方が開示を拒む場合、まずは証拠を示して任意の開示を求めますが、それでも応じない場合には、法的手段を用いた調査を検討することになります。

法的な調査手段:弁護士会照会と調査嘱託

相手方の財産を調査する主な手段として、以下の二つが挙げられます。

  • 弁護士会照会(23条照会)
    弁護士会を通じて、金融機関等に対して情報開示を求める制度です。ただし、多くの金融機関は名義人の承諾を回答の条件としており、承諾が得られない場合は回答を拒否される実情があります。

  • 調査嘱託
    家庭裁判所を通じて金融機関等に情報の開示を求める手続です。預貯金の残高や取引履歴を確認するために有用な場合があります。ただし、調査嘱託は、調停・審判等の裁判所の手続が係属していることが前提となり、裁判所が必要性・相当性を認めた場合に行われます。また、申立てに当たっては、少なくとも金融機関名や支店名などを一定程度特定し、調査を求める理由を明らかにする必要があります。

改正法による情報開示命令と制裁

令和8年4月1日施行の改正法(家事事件手続法および人事訴訟法)により、裁判所が当事者に対し、財産の状況に関する情報を開示するよう命じることができる「情報開示命令」の制度が導入されました。この命令に対し、正当な理由なく開示を拒んだり、虚偽の情報を開示したりした場合には、10万円以下の過料に処せられるという制裁が設けられています。

財産が特定できない場合の認定手法

相手方が合理的な理由なく資料の開示に応じない場合、裁判所が、既に提出されている資料、過去の通帳の写し、収入状況、生活状況、財産の形成経過などを踏まえて、相手方に不利な方向で事実認定を行うことがあります。もっとも、隠匿財産の存在や金額が当然に認められるわけではないため、可能な限り客観的資料を収集しておくことが重要です。

合理的な主張に基づく認定

申立当事者が過去の通帳コピー等から合理的に推認した額を主張し、相手方がそれを容易に覆せるにもかかわらず反論しない場合、その主張額を対象財産と認定した例があります。

離婚後に隠し財産が発覚した場合

離婚時に財産分与を行っていない場合

離婚の成立後に隠し財産が判明した場合、まずは話し合いを求めますが、応じない場合は家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てることが考えられます。

離婚時に財産分与を行っている場合

当事者間の財産分与の合意が全対象財産についてのものでない場合、財産分与未了の部分が残っているとして、家庭裁判所に対して財産分与の申立てを行うことが可能です。

財産分与の合意が成立しており、清算条項が存在する場合に再度財産分与の請求を行うことができるか否かは、ケースバイケースです。

なお、相手方が財産を意図的に隠匿していたような場合には、財産分与の請求期間経過後であっても、不法行為に基づく損害賠償請求が問題となることがあります。ただし、単に相手方が財産を開示しなかったというだけで直ちに損害賠償が認められるわけではなく、故意の隠匿や違法性を基礎付ける事情が必要となります。

財産分与の請求期限

財産分与の請求期限は、改正法により離婚後5年に延長されましたが、令和8年3月31日以前に離婚した場合は、従来通り離婚後2年となる点に注意が必要です。

結論

相手方が財産を隠匿している疑いがある場合、弁護士会照会や調査嘱託、さらには新しい情報開示命令制度を活用して、客観的な証拠の収集を検討することができます。また、相手方が合理的な理由なく資料の開示に応じない場合には、提出済みの資料や当事者の対応等を踏まえて、相手方に不利な方向で事実認定が行われることもあります。請求期限を念頭に置きつつ、正確な資産把握に努めることが、正当な分与を受けるために重要です。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。