生命保険の財産分与 〜生命保険の調査方法について〜
- 生命保険
生命保険も財産分与の対象となることがある。
解約返戻金が発生する生命保険(貯蓄型保険)は、財産的価値があると評価できるので、財産分与の対象となります。
実際には、財産分与の基準時時点(別居時、もしくは離婚時)での解約返戻金額を分けることになりますので、契約している保険の内容は、非常に重要となります。
生命保険の調査方法
生命保険の解約返戻金の有無やその額については、契約者が保険会社に問い合わせて解約返戻金見込額の証明書を発行してもらう方法によって、確認することができます。
また、保険証券に、契約時からの年数に応じた解約返戻金の額が記載されているものがありますので、保険証券から解約返戻金の見込額を推定することができる場合もあります。
婚姻前から生命保険を契約している場合は、婚姻時の解約返戻金の金額と、財産分与の基準時時点の解約返戻金の金額をそれぞれ算出し、差額を確認する必要があります。
相手がどのような保険に加入しているか不明な場合
そもそも、相手がどのような保険に加入しているのか不明な場合は、相手方の加入保険を調べる必要があります。
自分で調べる
保険証書や、相手の預金通帳の取引履歴から、相手が加入している保険会社や保険料を知ることができます。しかし、夫婦といえども、契約者以外の第三者の問い合わせについて、保険会社や金融機関から回答を得ることは難しいでしょう。
保険証書や相手の預金通帳を確認できない場合は、保険会社から送られてくる郵便物などが手掛かりになることもあります。
相手方に聞く
自分で調べてみるには限界がありますので、わからない場合は直接相手方に聞くとよいでしょう。
なお、相手方に財産の開示を依頼すると、一定の財産については開示されることが多いですが、開示されている財産が全てとも限りませんので注意が必要です。
弁護士会照会制度を利用する
弁護士会照会制度とは、弁護士法23条の2に基づき、弁護士会が、官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度です。
この制度を利用して、保険会社や銀行に対して照会を行い、回答を得ることが考えられます。もっとも、保険会社や金融機関の支店など、調査対象をある程度は特定しておく必要があります。
また、弁護士会照会は裁判外の手続なので、交渉でも利用できることがメリットです。
なお、弁護士会照会を受けると、照会先の団体は、原則として回答する義務を負いますが、契約者本人の同意を求められたり、回答を拒否されたりする場合もあります。
調査嘱託
調査嘱託とは、裁判所を通して行う財産調査の手続をいいます。弁護士会照会では回答を拒否されたケースでも、裁判所を通じた調査嘱託であれば回答を得られる可能性があります。
調査嘱託は、制度上では調停、審判、訴訟いずれの段階でも利用できることになっていますが、調停で調査嘱託が行われるケースはあまりなく、審判や訴訟段階になってようやく調査嘱託が行われるケースが多いようです。
また、探索的な調査嘱託を行うことは好ましくないと考えられているため、闇雲に複数の金融機関や保険会社に対して一斉に調査嘱託を利用することはできません。
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