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医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚について

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医者・医師・歯科医師の夫をもたれている方で、離婚をお考えの方もおられるかと思いますが、医者・医師・歯科医師との離婚は、特有の問題をかかえることもあります。

以下では、医者・医師・歯科医師を夫にもつ夫婦に生じうる離婚問題について、説明いたします。

離婚の合意について

夫婦間での離婚の合意に基づいて離婚届を提出することにより、離婚を成立させることができます。
この点については、医者・医師・歯科医師を夫にもつ夫婦と、その他の夫婦との間に違いはありません。

親権者の指定について

未成年の子がいる場合、離婚後の親権について定める必要があります。
共同親権が導入されたことにより、離婚後の親権は、父母の合意により父母双方を親権者とすることも、一方のみを親権者とすることも可能となりました。

夫が医師又は歯科医師である事案では、子の養育や将来の進路をめぐって対立が先鋭化することがあります。とりわけ、夫が代々医師又は歯科医師の家系に属する場合には、「子どもに家業を承継させたい」との意向から、離婚後の親権の在り方や監護者をめぐる紛争が生じやすい傾向があります。

協議や調停で折り合いがつかない場合には、最終的に家庭裁判所が、子の利益の観点から、共同親権が適切か、単独親権が適切か、また監護者をどちらとするのが相当かを個別具体的に判断します。

その判断に当たっては、従前と同様、親側の事情及び子側の事情を総合考慮しつつ、監護の継続性、子の意思、きょうだい関係への配慮、父母それぞれの養育態勢、他方当事者との適切な意思疎通や養育上の協力可能性などが重要な要素となります。

そのため、「医師・歯科医師の家系である」という事情のみを理由として、当然に父側が有利になるとか、母側が不利になると考える必要はありません。むしろ、個別の事案ごとに、子の利益にとってどのような親権・監護の形が最も適切かという観点から、丁寧に評価されることになります。

養育費について

現在の家庭裁判所及び高等裁判所等の実務においては、権利者・義務者の各収入、子の数、年齢に応じた養育費の算定表に従い、養育費の算定がなされています。
しかしながら、算定表は、公立の学校に進学していることを前提として作成されているため、医者・医師・歯科医師の家系で、子どもが私立学校や医学部に通っていたりする場合、養育費の取り決めについて、争いが生じやすいといえます。

子どもが私立学校に通っている場合

私立学校の学校教育費については、「義務者が子の私立学校への進学に同意しているか、当事者の学歴、職業、資産、収入、居住地域の進学状況等に照らして私立学校への進学が相当であると認められる場合においては、適切な金額を加算することがある」と考えられています。

子どもが塾に通っている場合

塾や予備校費用についても、私立学校と同様に、義務者の承諾の有無、義務者の収入・学歴・地位、当事者の従前の生活状況、現在の生活状況等に基づき判断されることになりますが、私立学校の学費よりも、加算の判断は慎重になると考えられます。

成人した子どもが在学中の場合

医者・医師・歯科医師の子どもであれば、子どもが医学部を目指している、あるいは現在医学部にて在学中であるとの場合が多いかと思いますが、子どもが成人後も大学で学業を続けている場合、子どもが成人したとしても、親からの扶養を必要とする「未成熟子」に当たり、婚姻費用や養育費の支払いを請求できる余地があります。

財産分与について

医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚問題では、財産分与において医者特有の問題点があります。
以下、特に問題になりやすい点について、ご説明いたします。

夫が開業医の場合、事業用資産は財産分与対象財産ですか?

医者・医師・歯科医師である夫の個人事業により生じた財産については、原則夫婦の協力により形成された財産であるといえます。
そのため、事業用財産の価値を算出し、同事業用財産を夫婦共有財産に組み入れたうえで、具体的な分与方法を検討することになります。

夫が個人開業している医院の手伝いを妻がしている場合、離婚に伴い、雇用関係は終了しますか?

離婚の事実のみを理由として、雇用関係を当然に終了させることはできません。
雇用関係を終了させるためには、離婚手続きとは別に、退職の手続きを行う必要があります。
なお、離婚のみを理由とした解雇は、合理的な理由がないと考えられますが、離婚後に同じ医院で働くことは、現実問題として難しいと思われますので、離婚の話し合いの際に、雇用契約をどのようにするのかについても、夫婦間でしっかりと話し合いを行われることをお勧めします。

婚姻期間中に、夫の両親から贈与を受けた場合、財産分与で考慮されますか?

例えば夫の両親が、婚姻後、医者・医師・歯科医師である夫に対して、開業資金として行った贈与が夫の特有財産かどうか争われることがあります。
このような場合、夫の両親が、夫個人に対して行った贈与であるか、夫婦双方へとの趣旨で行った贈与であるかを慎重に検討し、判断すべであると考えられます。

夫が理事を務めている医療法人の財産を財産分与の対象とすることはできますか?

医療法人の財産については、医療法人と夫個人が別人格であるため、財産分与の対象とはなりません。
ただし、夫のみが出資する小規模の医療法人であり、医療法人と夫・妻との財産が明確に分離されずに管理されているといった特別の事情が認められる場合は、医療法人の財産を財産分与対象財産に含めて分与額を判断する余地があります。
なお、婚姻後に医療法人の出資持分を得た場合は、医療法人の出資持分が財産分与の対象財産となります。

年金分割について

夫が医療法人に所属する医者であり、厚生年金に加入している場合は、妻は、年金分割の手続きを取ることが可能です。
しかし、開業医などで、国民年金に加入している場合は、妻は、年金分割の手続きを取ることができません(妻が厚生年金に加入している場合は、むしろ妻側が年金分割をされることになります。)。
なお、夫が医師年金などの私的年金に加入している場合、当該私的年金は年金分割の対象とならず、財産分与の中で解決すべき問題となります。

離婚慰謝料について

医者・医師・歯科医師の夫が不貞行為をした場合、離婚慰謝料は高額になりますか?

慰謝料の額は、様々な事情を総合して検討して決められると考えられており、当事者の社会的地位や支払い能力も慰謝料額を判断する事情となりえます。
しかし、昭和40年代までの裁判例では、当事者の社会的地位や支払い能力について慰謝料算定の直接の事情として考慮されることが多かったものの、近時の裁判例では、これらの事情を慰謝料算定の考慮事情に直接入れないことが多くなっております。
夫が医者・医師・歯科医師である、という事情のみでは、医者・医師・歯科医師以外の者が不貞行為をした場合と比べ、離婚慰謝料が高額になるとは考えにくいでしょう。

その他、医者・医師・歯科医師の夫を持つ妻に生じうる問題について

妻の実家が医者・医師・歯科医師の家系で、夫と妻の両親が養子縁組をしている場合、離婚が成立すると養子縁組が解消されますか?

夫と妻の離婚により直ちに妻の両親と夫の養親子関係が終了するわけではありません。養親子関係を終了させるためには、夫または妻の両親が、別途離縁の手続きを行う必要があります。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。