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配偶者の統合失調症を理由とする離婚が認められるか

  • 離婚原因

 配偶者が統合失調症を患ってしまった場合、婚姻生活を続けることが辛いと思われる方もいらっしゃるでしょう。このような場合、離婚を考えることも、仕方がないことなのかもしれません。
 それでは、配偶者が統合失調症を患ってしまったことを理由として、離婚は認められるのでしょうか。

統合失調症とは

 統合失調症とは、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。
 妄想が生じる、周囲に関心を示さなくなるなど、症状はさまざまですが、周囲との人間関係に悪影響を与える可能性があります。
 10代から40代くらいまでに発病しやすいと言われますが、投薬や精神科のリハビリなどの治療により回復することが可能となっています。

配偶者の統合失調症を理由に離婚できるか

 配偶者の統合失調症を理由としてして離婚できるかですが、できるケース、できないケースがあります。
 離婚方法として、下記の3つの方法が考えられます。

協議離婚
協議離婚とは 協議離婚では、夫婦間での離婚の合意に基づいて離婚届を提出することにより、離婚が成立します。協議離婚では、未成年者の親権者を指定しなければ、離婚届は.....
調停離婚
調停離婚とは 夫婦間で離婚について協議が調わなかった場合や協議自体ができない場合に、家庭裁判所に調停を申し立てることになります(「夫婦関係調整調停事件」)。離婚.....
裁判離婚
裁判離婚とは 調停が不成立であった場合や、実質的な調停活動はあったものの調停が取り下げられた場合、当事者は離婚の訴えを提起することができます。調停がすでになされ.....

離婚できるケース

 協議離婚と調停離婚の場合、夫婦双方が離婚に合意すれば離婚することが可能です。
 家庭裁判所を利用するか、しないかの違いはありますが、離婚する理由については問われませんので、配偶者の統合失調症を理由として離婚出来るケースとなります。

離婚できないケース

 夫婦の一方が離婚に応じない場合、離婚するためには離婚訴訟を提起しなければなりません。

 裁判離婚の場合、離婚請求をするためには民法770条1項で定められた下記の離婚事由が必要となります。

不貞行為
不貞行為とは 不貞行為とは、配偶者のあるものが自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことです。性的関係の相手方と合意がある場合(浮気・不倫や売買.....
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは 正当な理由なく、夫婦の義務である同居・協力・扶助義務に違反する行為をすることを、悪意の遺棄といいます。悪意とは、遺棄の事実や結果の発生を認識して.....
3年以上の生死不明
3年以上の生死不明 配偶者が生きているか、死んでいるかが3年以上不明である場合、離婚原因となります。行方不明だとしても、生きていることが分かっている場合には、こ.....
強度の精神病
強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと 配偶者が、夫婦間の協力義務が果たしえない程度の重症な精神病にかかり、回復の見込みがないことをいいます。「精神病」と.....
その他婚姻を継続し難い重大な事由
概要 婚姻中の一切の事情を考慮しても、婚姻関係が破たんして、回復の見込みがないことをいいます。婚姻関係の破たんとは、夫婦双方に婚姻を継続する意思がないこと、客観.....

統合失調症は強度の精神病として認められるか

 かつては不治の病と考えられていた統合失調症ですが、医学の進歩により現在では薬やリハビリにより症状を緩和することも可能となっています。
 それゆえ、統合失調症は、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」とはまではいえない状況になっています。
 また、夫婦には相互扶助義務がありますので、まずは統合失調症の配偶者を献身的にサポートすべきでしょう。
 配偶者が統合失調症であるだけは、裁判所が離婚を認めることはなかなか難しいといえます。

統合失調症以外の原因があれば離婚が認められる可能性もある

 上述のとおり、配偶者が統合失調症であるだけでは裁判所から離婚が認められる可能性は低いです。
 しかし、統合失調症を契機として、下記のような婚姻を継続することが難しいと思われる事情があれば、離婚が認められる可能性があります。

  • 統合失調症の配偶者からDVやモラハラを受けている
  • 長期間に渡る別居状態である
  • 夫婦関係が破綻してしまって、お互いに関係を修復する意思がない

注意点

 統合失調症の病状が進行すると認知機能障害を引き起こす場合があります。
 認知機能障害によって意思能力がないと認められる場合には、協議離婚や調停離婚を行うことはできません。そのため、離婚裁判を提起することになりますが、意思能力がない配偶者は裁判を行うことも、弁護士に依頼することもできません。
 その場合、まずは意思能力がない配偶者に後見人をつけてもらうよう家庭裁判所に審判の申立を行う必要があり、選任された成年後見人を代理人として、本人に対して離婚裁判を提起することとなります。

統合失調症の配偶者と裁判離婚する方法

 配偶者の統合失調症治癒のためにサポートを尽くしても、症状が改善しないこともあるでしょう。この時初めて離婚という選択肢を考えることとなります。
 協議や調停で離婚が成立すれば問題ありませんが、話し合いではまとまらない場合は離婚裁判を提起することになります。
 前述の通り、配偶者が統合失調症であるだけでは離婚は認められにくいですが、配偶者の統合失調症治癒のために尽力し、それでもなお婚姻関係の維持が困難なことを主張立証することができれば、離婚に有利に働くことでしょう。

統合失調症を理由とする離婚請求の判例

離婚請求が棄却された事例(最高裁昭和33年7月25日判決)

 妻が精神分裂病にかかり回復の見込みがない場合において、夫からの離婚請求を認めなかった事例です。この判例のポイントは以下となります。

  • 配偶者が不治の精神病になった場合でも、直ちに民法770条1項4号や同2項の離婚原因にあたるとすることはできない。
  • 離婚を請求する側は、配偶者の離婚後の療養や生活において、できるかぎり具体的方途を講じ、将来的な方途の見込みをつけなければ婚姻関係を廃絶することは不相当である。

※精神分裂病
2002年8月の日本精神神経学会において、「精神分裂病」から「統合失調症」に名称が変更されました。

離婚請求が認められた事例(最高裁昭和45年11月24日判決)

 妻が精神分裂病にかかり回復の見込みがない場合において、夫からの離婚請求を認めた事例です。離婚請求を認めるに当たり、下記の事情が考慮されました。

  • 妻の実家の資産状態が良好である
  • 夫は、妻のため十分な療養費を支出できる程に生活に余裕がない
  • 夫は過去の療養費について、妻の後見人である妻の父との間で分割支払の示談をしてこれを全額支払った
  • 夫は将来の療養費についても可能な範囲の支払をなす意思のあることを表明した
  • 夫は夫婦間の子をその出生当時から引き続き養育している

まとめ

 配偶者が統合失調症になってしまった場合、今まで通りの婚姻生活を送ることは難しくなります。しかし、配偶者の統合失調症を理由として離婚するのも簡単な問題ではありません。このような場合、まずは、弁護士に離婚についてご相談されることをおすすめいたします。