離婚についての知識knowledge

その他婚姻を継続し難い重大な事由

概要

婚姻中の一切の事情を考慮しても、婚姻関係が破たんして、回復の見込みがないことをいいます。婚姻関係の破たんとは、夫婦双方に婚姻を継続する意思がないこと、客観的に婚姻共同生活を修復する見込みがないことをいいます。別居が相当期間に及んでいるかは、婚姻関係破たんの判断で重要視されます。
また、以下の場合も、婚姻関係が破たんしており、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められることがあります。

身体的・精神的な暴行・虐待がある場合

夫婦間における暴力・虐待行為は絶対に許されるものではありませんが、具体的な暴力・虐待行為が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか否かは、様々な事情を考慮して判断されるので、必ずしも離婚原因になると一概にはいえません。

「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとされた事例

身体的暴力

① 妻が缶コーヒーで夫の額部を殴打したのに対し、夫が妻の顔面を手拳で殴打し、妻の歯二本が折れたなど、夫が妻に対して、相当の程度・回数の暴行・虐待に及んだ事例があります。

② 夫が長女に対して、水を飲むと、夜中にトイレに起きてうるさいからといって、水分の摂取を禁ずるなど、口うるさく指示し、思うようにならないと、妻や長女に対して、殴ったり蹴ったりする等の暴力を振るった事例があります。

③ 夫が妻に対して、髪をつかんで振り回す、電話器を投げつける、包丁を持ち出し「殺してやる」などと脅かした事例があります。

④ 婚姻関係の破綻の原因が、夫が身体障害という自らの苦しみを妻に対する暴力や妻の目の前での物に対する破壊等でしか解消する道を見い出すことができず、その行為の妻に与える影響等に対する推察ができなかったことにあるとされた事例があります。

⑤ 妻が夫から、顔面を殴られたり、殴られて茶箪笥にぶつかり鼓膜を破ったり、(夫が)食器の入った食器篭を戸に投げ付けたりした事例があります。

精神的暴力

① 情緒的虐待
妻を冷遇ないし無視し、家業の経営やその経済状態について妻に何ら相談しないばかりか、日常の夫婦としての意思疎通、会話を求める妻の要請を受け付けず、その結果明確な理由も分からないまま先代からの家業を倒産に至らせた事例があります。

② 脅し
夫が妻に対して、「岡山弁は汚いので標準語で話せ」「食事は俺が帰るまで待ってろ」などと命令し、「前の女には殴ったり蹴ったりしたけど、お前には手を出さないでおこうと思う」などと言って、妻を強制的支配下においていた事例があります。

③ 経済的虐待
夫が妻の両親などに対して不信感を抱いたことが遠因となり、ついには、夫が妻の不適切な言辞をなじって生活費を渡さなくなった事例があります。

性的暴力

① 夫が妻に過度の性交渉要求をし、これに応じないと夫は怒って、その都度妻に暴力を加えた事例があります。

② 夜間に仕事に従事する夫が日中でも妻にしばしば性交渉を要求し、これを断る妻を無理矢理押さえつけ、殴る蹴るなどの暴行を振い、性交渉を行うことがある事例があります。

重大な病気・障害がある場合

民法770条1項4号にいう「回復の見込みがない」「強度の精神病」にあたらない程度の精神病であっても、それが原因となって婚姻が破綻している場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しうると考えられています。

同4号の「回復の見込がない」「強度の精神病」の場合、最高裁は、精神病者の療養・監護について十分な保障がない場合には離婚の請求を認めないとしているため、同4号にあたらない程度の精神病の場合も同様に考えるべきかが問題となります。最高裁は、妻が強度の精神病にかかってはいるが回復の見込みがないと断定することはできないため民法770条1項4号の離婚原因を認定できない事案において、「妻の入院を要すべき見込期間、夫の財産状態及び家庭環境を改善する方策の有無など諸般の事情につき更に一層詳細な審理を遂げ」ることを要求しています。したがって、事情としては考慮されるように思われます。

精神病以外の難病や重度の身体的障害の場合、精神病のように夫婦の精神的な交流までを阻害することはないので、例え回復の見込みがなくとも、それだけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しないと考えられます。それゆえ、病気や身体障害の程度に加えて、離婚請求者が婚姻継続の意欲を喪失したのも無理がないと認められる事情が必要と思われます。

離婚を認容した事案

統合失調症

夫が統合失調症にかかり、症状は中等度であるが回復の見込みはなく、かえって再発のおそれがある事案で、夫婦の協力扶助義務を果たすことができない程度の精神障害ではないので民法770条1項4号にいう「強度の精神病」にはあたらないとしたうえで、同5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして妻からの離婚請求を認めた事例があります。なお、別居期間が6年以上に及ぶこと、夫婦がそれぞれ経済的には別個独立の生活を営んでいること、妻は婚姻継続の意思を全く有していないことなどの事情も考慮されたものです。

認知症

妻が認知症(アルツハイマー症)とパーキンソン病にかかり、1級の身体障害で寝たきりの状態であるうえ、精神障害の程度は重度で回復の見込みがなく(通常の会話もできず、夫も分からない状態)、公立の特別養護老人ホームに入所しているという事案で、夫からの離婚請求が認められました。裁判所は、妻の病気が民法770条1項4号の「強度の精神病」に該当するか否かについては疑問が残るとし、同号による離婚請求は認めませんでしたが、妻が病気のため長期間にわたり夫婦間の協力義務を全く果たせないでいることなどによって婚姻関係が破綻していることが明らかであるとして、同項5号に基づく離婚請求を認めた事例があります。なお、この裁判例においては、夫が42歳で再婚を考えていること、妻は離婚後も全額公費負担で完全介護を受けられること等の事実が併せ考慮されており、さらに、妻の病気の症状が極めて重く、その性質・程度は民法770条1項4号の強度の精神病にも比肩しうるものであったこと、夫がこれまで可能な限りの療養・看護を尽くし、夫としての誠意を十分に尽くしてきたことなどの事情もありました。

脳腫瘍による植物状態

妻が脳腫瘍による失外套症候群のため植物状態とほぼ同一の状態(第1級障害認定)にあり、回復の見込みがない事案について、裁判所は、民法770条1項4号の趣旨をも掛酌したうえで、同5号により夫からの離婚請求を認めた事案があります。妻が植物的な状態になってから約4年を経過して婚姻関係の実体を取り戻す見込みがないこと、妻が離婚後苛酷な状態に置かれないよう配慮されていること、夫が長年妻の治療・見舞いに誠意を尽くしてきたことなどの事情が考慮されています。

離婚を否定した事案

統合失調症

妻が統合失調症を患ったが入通院の結果中程度まで回復し、家族等の庇護の下においては社会生活を送ることができる程度に回復し、現在では通院治療を受けながら単身生活を送っている事案において、夫婦の協力扶助義務を果たすことができない程度の精神障害ではないので民法770条1項4号にいう「強度の精神病」にはあたらないとしたうえで、同5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」も認められないとして、夫からの離婚請求を棄却した事例があります。今後妻の面倒をみることは耐え難いほどの経済的負担を夫に強いるものではないこと等の事情に鑑みると、夫側の事情はいずれも回復の見込みのない重大な精神病には該当しない精神病の配偶者を抱えた場合に他方の配偶者が通常負う負担の域を出ないと判断されたものです。

難病(脊髄小脳変性症)

結婚後5年して妻が国指定の難病(脊髄小脳変性症)と診断され、平衡感覚の失調、言語障害等の症状を呈し、日常生活さえ支障をきたす状態にあるが、一方、知能障害は認められないから、夫婦間あるいは親子間における精神的交流は可能であるという事案では、夫からの離婚請求が認められませんでした。
看病はおろか入院生活の援助もせずに放置し、将来にわたる誠意ある支援態勢を示さないという夫の態度のみによっては、婚姻が回復し難いほど破綻しているとはいえないとして、離婚を否定したものです。

犯罪行為・服役があった場合

ただし、単に犯罪行為・服役があっただけでなく、それによって夫婦生活が困難となったといえる事情を総合的に見て「婚姻を継続し難い重大な事由」となるかが判断されます。

過度な宗教活動をしている場合

前提として、夫婦はそれぞれ信教の自由を有しています。しかし、夫婦は、生活共同体ですから、夫婦それぞれの信教の自由は無制限でなく、一定の制限に服するといえます。過度な宗教的活動によって、夫婦の協力義務が果たせなくなったり、子どもの教育上支障が生じた場合などは「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。

離婚の請求が認容された事例

配偶者の双方が離婚を望んだ事例

宗教観の相違を夫婦双方が認め、双方から離婚の請求がなされ、又は被告も離婚に応じる決意をしたことから、裁判所は「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚の認容が比較的容易にできたと思われます。

配偶者の一方が離婚を望んでいるものの他方が反対していた事例

妻の宗教活動等が夫婦間の協力扶助義務に背馳し、その限度を超えるものであって、夫や家庭よりも宗教活動を最優先させようとするのに対し、夫が妻の信仰対象を嫌悪する等の状況にあることから、もはや夫婦関係は破綻しているなどと判断された事例があります。なお、別居期間や、夫婦間でのいさかいの期間なども考慮されています。

離婚の請求が棄却された事案

妻の宗教活動が原因となって夫婦間に亀裂が生じたことを認めたうえで、他方、夫にも妻の宗教活動を理解する寛容な態度が必要であったとし、夫婦の努力によって婚姻関係を修復する余地があるなどとして離婚が否定された事例があります。

親族との不和がある場合

いわゆる嫁姑問題など、配偶者の親族との対立は、直ちに離婚原因となるとはいえません。しかし、配偶者が不和の解消に非協力的であり、円満な夫婦関係を築こうと努力しないなどの事情から、婚姻関係の継続が不可能になったといえる場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。

性格の不一致がある場合

夫婦問の性格不一致があれば直ちに離婚原因となるとはいえませんが、性格不一致が原因となって、お互いが努力しても修復不可能なほどにまで夫婦関係が破たんしていれば「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。

性的不能・性交拒否・性的異常

性生活は婚姻生活における重要な要因です。性的不能、性交拒否、性的異常は、「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」にあたります。