子どもが大学に進学したことを理由とする養育費の期間延長について
- 養育費
養育費の分担は、特段の事情がなければ子どもが18歳に達した後最初に到来する3月までないし20歳になるまでとするのが一般的です。では、子どもが大学に進学することになった場合、養育費を大学卒業まで延長することは可能なのでしょうか。
本コラムでは、子どもが大学に進学したことを理由とする養育費の期間延長について解説いたします。
養育費の一般的な終期
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用です。一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまで、子どもの監護親が、非監護親に対して請求します。離婚する夫婦の間に経済的・社会的に自立できない未成熟の子がいる場合、その子どもの養育費は、非監護親も負担する義務があります(民法766条1項)。
法律で養育費が何歳まで発生するかについて明確に定められてはおりません。
なお、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、成人年齢の引き下げよりも前に、養育費の終期を「成人に達する日の属する月まで」と合意していた場合、合意当時の成人年齢(20歳)までの支払を合意したものと考えられるため、養育費の支払期間が18歳までに短縮されるわけではありません。
大学進学を理由とする養育費の延長は認められるか
子どもが大学に進学した場合、卒業するまで子どもが経済的に自立することは難しいです。そのため、扶養義務が続く可能性が高いです。しかし、学費等をアルバイトや奨学金など子ども自身が賄っている場合もあれば、完全に親の援助に頼っている場合もあります。20歳を超えた学生が未成熟子といえるかは、個別の事情で判断されることとなります。
養育費の延長を求めるためには、元の配偶者と新たに協議をして取り決めるか、裁判所に判断してもらう必要があります。
東京高裁平成29年11月9日決定
この事案は、抗告人が、相手方に対し、養育費として、子どもが成人に達する日の属する月まで、1人あたり月5万5000円ずつ支払うことが定められていましたが、子どもが私立大学に進学して学納金等の負担が必要になったと主張して、①双方の収入に応じて大学の学納金を分担すること、②養育費支払の終期を22歳に達した後の最初の○月までに延長することを求めたものです。
裁判所は「相手方は、親として、未成熟子に対して、自己と同一の水準の生活を確保する義務を負っているといえること、本人は成人後も大学生であって、現に大学卒業時までは自ら生活をするだけの収入を得ることはできず、なお未成年者と同視できる未成熟子であること、相手方は本人の私立大学進学を了解していなかったと認められるが、およそ大学進学に反対していたとは認められないこと、相手方は大学卒の学歴や高校教師としての地位を有し、年収900万円以上あること、相手方には本人の他に養育すべき子が3人いるとしても、そのうちの2人は未だ14歳未満であることに照らすと、相手方には、本人が大学に通学するのに通常必要とする期間、通常の養育費を負担する義務があると認めるべきである。そして、相手方は抗告人に対し、本人が大学に進学した後も成人に達する日の属する月まで毎月5万5000円ずつの支払義務を負っていたから、毎月同額を本人が満22歳に達した後の最初の○月までの支払を命じるのが相当である。」と判断しました。
子どもからの扶養料の請求
合意した養育費の支払期間が終期を迎えたとしても、子どもが大学進学に伴って学費や生活費が必要となる場合、子ども自らが非監護親に対し、扶養料として学費や生活費を請求することも考えられます。
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