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交通事故の損害賠償金の財産分与~交通事故の損害賠償金が財産分与の対象となるかが問題となった事例(大阪高決平成17・6・9)

  • 財産分与

 本コラムでは、交通事故の損害賠償金が財産分与の対象となるかが問題となった事例(大阪高決平成17・6・9)を紹介いたします。

事件の概要

  1. 申立人と相手方は、平成6年3月9日婚姻したが、平成15年9月19日離婚調停が成立し、申立人と相手方とは離婚した。
  2. 相手方は、平成12年8月11日交通事故(以下「本件事故」という。)により負傷し、損害保険会社から平成15年3月まで休業損害金等が支払われていたが、平成15年3月示談が成立し、平成15年3月26日相手方に対し5200万円が支払われた。
  3. 申立人は、相手方の営んでいた自営業の仕事を分担するとともに家事、育児全般についてすべて行ってきた。また、本件事故後の相手方の治療等にも協力してきた。

争点

 損害賠償金は財産分与の対象となるか

裁判所の判断

 抗告審では、「財産分与の対象財産は、婚姻中に夫婦の協力により維持又は取得した財産であるところ、上記保険金のうち、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料に対応する部分は、事故により受傷し、入通院治療を受け、後遺障害が残存したことにより相手方が被った精神的苦痛を慰謝するためのものであり、抗告人が上記取得に寄与したものではないから、相手方の特有財産というべきである。これに対し、逸失利益に対応する部分は、後遺障害がなかったとしたら得られたはずの症状固定時以後の将来における労働による対価を算出して現在の額に引き直したものであり、上記稼働期間中、配偶者の寄与がある以上、財産分与の対象となると解するのが相当である。本件においては、症状固定時…から、離婚調停が成立した日の前日である平成15年9月18日までの284日間の分につき財産分与の対象と認めるのが相当である。」と判断し、逸失利益のうち一部分が財産分与の対象となることを肯定しました。

コメント

 保険会社から支払われる給付金は、以下のように分けることができます。

  1. 治療費・通院交通費などの積極的損害
  2. 休業損害・後遺症損害による逸失利益の消極的損害
  3. 精神的苦痛による損害としての慰謝料

 ①の治療費のうち、保険会社から病院に直接支払われずに、被害者が直接支払った部分についての補填分については、家計から治療費を支出していた場合は、共有財産になると考えられます。

 ②休業損害・後遺障害による逸失利益の消極的損害については、財産分与の基準時までに相当する部分を財産分与の対象財産とすることが相当です。

 ③精神的苦痛による損害としての慰謝料は、交通事故被害者の精神的苦痛を慰謝するためのものなので、交通事故被害者の特有財産であると考えられています。