法人(会社)名義の財産の財産分与~夫婦いずれの名義でもなく法人(会社)名義であった財産が財産分与の対象となるかが問題となった事例(広島高岡山支判平成16・6・18)
- 財産分与
事件の概要
X(妻)は、昭和48年にY(夫)と婚姻し、1男3女をもうけた。Yは、自動車整備士資格を有し、婚姻前から自動車修理会社Aを営んで仕事に精励し、昭和56、7年ころ自動車販売業に事業拡大し、昭和61年1月に自動車販売会社B(代表取締役はX)を設立し、平成5年には不動産管理会社C(取締役はXYほか)を設立し、XY又は会社名義で不動産ほか多額の資産を形成した。
Xは、家事や4名の子の育児に従事しながらYの仕事を手伝い、経理事務担当、自動車販売、不動産管理の業務に従事するなどして、資産形成に大きく貢献した。
Yは、平成9年ころから、Z(女)と不貞関係を持ち、これが露呈しても半ば公然と不貞関係を継続し、Xと諍いを繰り返すなどした。
争点
会社名義の財産は財産分与の対象となるか
裁判所の判断
B社は、一審原・被告が営んできた自動車販売部門を独立させるために設立され、C社は、一審原・被告が所有するマンションの管理会社として設立されたものであり、いずれも一審原・被告を中心とする同族会社であって、一審原・被告がその経営に従事していたことに徴すると、上記各会社名義の財産も財産分与の対象として考慮するのが相当である。
コメント
1 第三者名義の財産と財産分与
財産分与の対象は、夫婦が婚姻後に経済的協力のものとで形成した夫婦名義の財産であって、第三者名義の財産は原則的に財産分与の対象となりません。
形式的には第三者名義の財産であっても、以下のように、実質的にみて夫婦の共有財産と言える場合は、清算の対象となりうる場合もあります。
- 夫婦で事業を営んでおり、事業の成功によって法人化がなされ、資産や収益が法人に帰属して法人名義となっている場合
- 夫婦の一方のみが事業を行っていたが、その事業が法人化され、同様に資産や収益が法人に帰属している場合
2 法人名義の財産が財産分与の対象となりうる場合
①夫婦で事業を営んでいた場合
夫婦が共同で個人事業を営んでいる場合には、事業用財産であっても財産分与の対象となります。(東京高裁昭和54年9月25日)
法人の実態が家族経営で、実質的に個人事業と異ならない場合、その法人名義の資産についても財産分与の対象となるのが相当と解されています。
本事例では、A社はYの会社ではあるものの、Xも経理を担当し、夫婦で自動車関連事業を行っていました。また、A社から独立させたB社の代表になったのもXであり、さらにC社も夫婦がともに役員を務めました。
そのため、法人名義の資産も財産分与の対象となると解する余地が多分にありました。
②夫婦の一方のみが事業を営んでいた場合
夫婦の一方のみが事業を営んでおりそれが法人化された場合も、夫婦で事業を営んでいた場合と同様に、それが実質的に個人と同視できる規模である場合には、当該法人の財産も財産分与の対象となると考えることができます。
- 2024.03.04
離婚時における財産分与 - 2023.10.02
交通事故の損害賠償金の財産分与~交通事故の損害賠償金が財産分与の対象となるかが問題となった事例(大阪高決平成17・6・9) - 2023.09.25
退職金の財産分与~定年退職まで年数がある場合に退職金が財産分与の対象となるかが問題となった事例(東京家審平成28・2・26)