不動産の財産分与⑧ ~自宅を売却せずに維持する際の自宅の所有名義について~
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婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。
本コラムでは、財産分与にあたり、自宅を売却せずに維持する際の自宅の所有名義について解説いたします。
共有名義の場合
離婚後の自宅の所有名義が共有名義である場合、様々なリスクが存在します。
変更行為
自宅が共有名義である場合、変更行為を行うためには、共有者全員の同意が必要となります。
変更行為には以下のようなものがあります。
- 売却・贈与
- 大規模修繕
- 増改築
- 解体・建替え
- 長期賃貸借
将来的に自宅を売却、活用したいと考えた際、元配偶者と連絡を取り合わなければなりませんし、必ずしも相手の同意が得られるとも限りません。
管理行為
自宅が共有名義である場合、管理行為を行うためには、各共有者の持ち分の価格に従い、その過半数で決定する必要があります。
自宅に居住する者の持ち分の価格が過半数に達していない場合、管理行為を行うためには元配偶者と連絡を取り合わなければなりませんし、必ずしも相手の同意が得られるとも限りません。
権利関係
自宅が共有名義である場合、共有者は、自身の持ち分を第三者に譲渡することができるため、このような場合、権利関係が複雑になります。
単独名義の場合
自宅が共有名義の場合、前述のようなリスクがあるため、単独名義にする事が一般的です。
どちらの当事者の名義にするかを検討するにあたっては、離婚後の自宅の利用状況や住宅ローンの支払能力等を考慮することになります。
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