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面会交流の間接強制について

  • 面会交流
面会交流が果たされなかった場合、強制執行の一方法として間接強制の手続をとることが考えられます。では、間接強制とはどのような手続なのでしょうか。

間接強制とは

間接強制は、強制執行手続きの一種です。

義務を履行しない義務者に対して、金銭の支払いを課すことを決定(=警告)することにより心理的に圧迫し、義務の履行を促す手続です。

面会交流の場合、概ね1回につき数千円から数万円程度の金銭の支払義務が認められることが多いです。

面会交流の場合、無理矢理子どもを連れ出して面会を強行するといった直接強制は現実的ではありません。

そのため、間接強制を申立てることにより、面会交流が実施されなかった場合には金銭を支払わなければならいとのプレッシャーを与え、面会交流を自発的に実施してもらえるように促すのです。

間接強制の申立

調停調書、審判書、判決書等に記載されている債権者が申立人となり、調停、審判、判決等をした家庭裁判所に申立てることになります。

費用

・収入印紙 2,000円
・郵便切手(申立てされる家庭裁判所ヘご確認ください。)

必要書類

・申立書
 (管轄の家庭裁判所により必要数が異なりますので、申立てされる家庭裁判所へご確認ください。)
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・執行力のある債務名義の正本、債務名義の正本送達証明書

間接強制が認められるためには

面会交流で間接強制が認められるためには、面会交流の内容が具体的に特定されている必要があります。

最高裁判所平成25年3月28日決定(平成24(許)第48号)

面会交流において間接強制が認められるには、
・面会交流の日時又は頻度
・面会交流時間の長さ
・子の引渡しの方法
を明確に定め、「監護親がすべき給付の特定に欠けるところがない」必要があるとしました。

この事案では
①面会交流の日程は月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで、場所は長女の福祉を考慮して非監護親自宅以外の非監護親が定めた場所とすること
②面会交流の方法として、受渡場所は協議が整わないときは駅東口改札付近とし、監護親は長女との面会には立ち会わない
等を定めていました。

最高裁判所平成25年3月28日決定(平成24年(許)47号)

同日の別の最高裁決定では、調停条項の記載内容では面会交流の内容が十分に特定されているとはいえないとして間接強制を否定しました。

こちらの事案では
①面会交流は2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子をみながら徐々に時間を伸ばすこととする
②監護親は面会交流開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に合わせ、非監護親は終了時に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、監護親と非監護親の間で協議して定める
と調停調書で定められていました。

大阪高等裁判所平成24年3月29日決定(平成24(ラ)223号)

この事案では、非監護親が監護親に対して債務名義どおりの面会交流を求め、面会交流債務の不履行1回につき2万円の支払いを求めて間接強制を申立てました。

原審では月1回の面会交流の不履行1回につき8000円の支払いを命じて申立を一部容認したため、監護親が原決定の取消し等を求めて執行抗告しました。

間接強制の命令を発するには債務者の意思のみによって実現できる債務である必要がありますが、この事案では子どもが10歳に達しており、面会を強く拒否していました。

監護親が子どもに面会を応じるよう働きかけても限界があるため、監護親の意思のみによって実現することができないとして間接強制の申立を却下しました。

間接強制を見据えた面会交流内容にすべきか

面会交流は、子どもの利益を考え、父母間で協議して柔軟に実施することが望ましいため、最初から間接強制を見据えて面会交流の内容を具体的に決めておくことは難しいでしょう。

そのため、最初はある程度交流の内容を抽象的に決めておき、その内容で問題があるようならば改めて面会交流調停を申立て、そこで具体的な交流の内容を取り決めることが望ましいです。

義務者が、新たに決めた内容に違反するようであれば、その段階で、間接強制の申立てを検討するとよいでしょう。