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株式の財産分与 〜非上場株式の評価方法(時価純資産法)〜

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非上場株式の財産分与

非上場株式とは、いわゆる東証や大証、名証、JASDAC、マザーズなどの金融商品取引所に上場されていない株式のことをいます。

非上場株式の場合、不特定多数の投資家が自由に売買できる市場がないため、市場の取引価格というものが存在しません。

もっとも、非上場株式もまた財産である以上、夫婦の離婚に際して財産分与の対象となりえます。

では、非上場株式が財産分与の対象となる場合、その株式はどのように評価されて財産分与の対象とされるのでしょうか。

純資産方式

非上場株式を評価する方法のひとつに「純資産方式」があります。

これは、基準日時点での会社の純資産(総資産の額-総負債の額)を発行済株式総数で割り、株価の算定を行う方法です。

なお、純資産方式の中でも、基準となる会社の純資産の額の算出方法により、
①時価純資産法
②簿価純資産法
③修正簿価純資産法
に分かれます。

時価純資産法

時価純資産法とは、時価評価された資産から算出した会社の時価純資産額を発行済株式総数で割り、株価の算定を行う方法です。

時価純資産額÷発行済株式総数=1株あたりの価格

もっとも、全ての資産を時価評価するにあたって、当事者間でその適切性に争いが生じる可能性があるという難点があります。

簿価純資産法

簿価純資産法とは、会計帳簿上に記載されている資産から負債を控除することによって算出した会社の簿価純資産額を発行済株式総数で割り、株価の算定を行う方法です。
 
簿価純資産額÷発行済株式総数=1株あたりの価格

修正簿価純資産法

修正簿価純資産法とは、会計帳簿上の純資産額を基準に、含み損益を評価に加味して株価を算定する方法です。

含み損益を加味した簿価純資産額÷発行済株式総数=1株あたりの価格

含み損益を評価に加味するため、簿価純資産法よりも実態に則した価格となります。

他方、含み損益の額について、当事者間で争いが生じる可能性があるという難点があります。

純資産方式のメリット

純資産方式は、貸借対照表上の純資産を基に計算するため、客観性に優れているというメリットがあります。

また、清算手続中または清算予定の会社や、過去に蓄積された利益があるものの将来の利益があまり期待できない会社等において、その実態を株価に反映させやすいというメリットもあります。

純資産方式のデメリット

純資産方式は、負債の多い会社の場合には株価がゼロまたはマイナスと評価されたり、逆に、会社の利益が上がっていなくとも、保有資産の含み益が多い会社の場合に、株価が実態よりも高く評価される等、実態にそぐわない場合が生じてしまうというデメリットがあります。

また、知的活動が重要な役割を果たす産業や及び労働力に対する依存度が高い産業等について、株価の評価が実態にそぐわない場合が生じてしまうというデメリットもあります。

裁判例

純資産評価方法に関しては、次のような裁判例があります。

東京地判平成22・12・27

非上場会社の株式の相続時の評価額等が争点となった遺留分減殺請求訴訟において、その評価方法については時価純資産価額によることが妥当とし、当該非上場会社の資産である借地権の評価額については、路線価の0.8を除して計算した評価額を基準として算出した上で、当該非上場会社の株式の評価額を認定した事案。

大阪高判平成26・3・13判タ1411・177

離婚に伴う財産分与において、医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)に基づいて設立された医療法人に係る夫婦名義の出資持分を、当該医療法人の純資産価額に0.7を乗じた金額を出資持分の評価額とすべきだとして、財産分与額を算定した事案。