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財産分与で必要となる資料の集め方|通帳・給与明細・確定申告書の確認ポイント

  • 財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚の際または離婚後に分け合う制度です。実務上は「夫婦共有財産の清算」が中心となりますが、適正な清算を行うためには、いつの時点で(基準時)、どのような財産がいくら存在していたかを正確に把握する必要があります。そのため、預金通帳や給与明細、確定申告書といった客観的な資料の収集が極めて重要となります。もし相手方が任意に開示しない場合には、家庭裁判所における調査嘱託などの手続を活用して、口座残高や取引履歴を明らかにすることを検討することになります。

財産分与の基本:何が対象になり、どのように分けるのか

財産分与には、大きく分けて以下の3つの要素が含まれると解されています。

  • 清算的要素
    婚姻中に夫婦が協力して築いた財産の清算
  • 扶養的要素
    離婚後の生活保障
  • 慰謝料的要素
    離婚の原因を作ったことへの損害賠償

ただし、実務上の中心は、婚姻中に形成された夫婦共有財産を清算する「清算的財産分与」であり、慰謝料については、別途の請求として問題となることも少なくありません。

対象となる財産は、名義が夫か妻かに関わらず、婚姻中に協力して形成・維持された「共有財産」です。これには預貯金、不動産、自動車、生命保険(解約返戻金)、株式、有価証券、さらには将来支給される退職金についても、支給の蓋然性が高い場合には、財産分与の対象として考慮されることがあります。一方で、婚姻前から有していた財産や、婚姻中であっても相続・贈与で取得したものは「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象外となります。分与の割合は、家事労働や育児の貢献を含め、原則として夫婦対等(2分の1ずつ)とされています。

資料収集の重要ポイント:基準時と評価額

財産を特定し評価するためには、「基準時」と「評価時」の考え方を理解して資料を準備する必要があります。

  • 対象財産を特定する基準時
     一般的には、夫婦の経済的協力関係が終了した「別居時」となります。
     この時点で存在していた財産が分与の対象です。
  • 評価時
     資産価値が変動する不動産や株式などは、原則として「現在(審理終結時や分与時)の時価」で
     評価するのが一般的です。
     ただし、預貯金や生命保険の解約返戻金は、性質上「基準時(別居時)の残高・金額」を評価額
     とすることが一般的です。
     このように、項目によって必要となる資料の「日付」が異なるため、注意が必要です。

通帳・取引履歴の確認と収集

預貯金を財産分与するにあたり、以下の資料や情報を揃えることが求められます。

必要な資料

金融機関名、支店名、名義人、口座番号が分かる預金通帳の写しや残高証明書

確認期間

別居直前の不自然な払い戻しなどが争点になることがあるため、事案によっては、基準時(別居時)から1年程度遡った取引履歴を確認することが有用です。

開示されない場合の対応

相手方が通帳を隠したり開示に応じなかったりする場合には、家庭裁判所における調査嘱託等の手続を利用し、金融機関に対して残高や取引履歴の開示を求めることが考えられます。ただし、これらの手続を利用するためには、金融機関や支店、口座の存在をある程度特定できることが重要となります。

給与明細・確定申告書等による収入と財産の把握

収入関係の資料は、単に年収を確認するだけでなく、財産形成の背景を裏付ける重要な証拠となります。

確認すべき書類

源泉徴収票、給与明細書、確定申告書の控え、住民税の(非)課税証明書など。

チェックポイント

給与明細からは、財形貯蓄や積立保険料の天引き、住宅手当の有無などが把握できる場合があります。また、退職金の評価においては、基準時(別居時)に自己都合退職したと仮定した場合の支給見込額を算出するため、就業規則や退職金規程などの資料もあわせて確認することが望ましいです。

住宅ローンと消極財産の取り扱い

プラスの財産(積極財産)だけでなく、負債(消極財産)も考慮されます。

住宅ローン

不動産がある場合、現在の不動産時価から住宅ローンの残高を控除して清算価値を算出します。不動産の時価を証明するために固定資産評価証明書や査定書、ローンの残高を証明するために償還予定表などの資料が必要です。

清算の可否

積極財産の総額から負債を控除してマイナスになる(オーバーローン等)場合、実務上、清算的財産分与請求権は認められない傾向にあります。

結論

財産分与を適正かつ迅速に進めるためには、客観的な資料に基づいて「基準時に存在した財産」を漏れなくリストアップすることが不可欠です。令和8年4月1日に施行された改正法では、家庭裁判所が当事者に財産情報の開示を命じることができる制度も設けられました。もっとも、この制度だけで相手方の財産が当然にすべて判明するわけではないため、手元資料の整理や、調査嘱託等の手続を含めた資料収集が引き続き重要となります。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。