監護権
監護権とは
親権は、未成年の子の利益のために、子の心身の成長を図り財産を管理する親の権利・義務の総称であり、具体的には「身上監護権」と「財産管理権」に大別されます。このうち、子と生活を共にし、身の回りの世話やしつけ、教育などを行う「身上監護権」が、一般に「監護権」と呼ばれます。
離婚時の親権者と監護者の定め方
改正民法(令和8年4月1日施行)により、父母が離婚する際には、協議によって「双方(共同親権)または一方(単独親権)」を親権者として定めることになりました。その上で、親権者とは別に「子の監護をすべき者(監護者)」、「子の監護の分掌」を定めることも可能です(民法766条1項)。これらの定めは、いずれも「子の利益」を最も優先して考慮しなければなりません。
共同親権を選択した場合であっても、子がどちらの親と主に生活するのか、平日と休日で監護をどう分担するのかといった具体的な監護のあり方については、別途、子の利益を考慮して父母が協議等で定める必要があります。
監護者と親権者の権限
親権者と監護者を分けた場合、それぞれの権限は以下のようになります。
監護者の権限
監護者は、親権のうち身上監護に関する以下の権利義務を有します。
- 監護及び教育
子の世話やしつけ、教育を行う権利義務 - 居所の指定
子の住む場所を指定する権利 - 職業の許可
子が職業に就くことを許可する権利
改正法(令和8年4月1日施行)では、監護をすべき者は、これらの監護及び教育、居所の指定などを単独で行うことができると明確化されました(改正民法824条の3)。
親権者の権限(監護者と分けた場合)
監護者でない親権者は、主に財産管理権と、一部の身分行為に関する法定代理権を有します。
- 財産管理権
子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について子を代理する権利 - 身分行為の代理権
- 15歳未満の子の氏の変更や養子縁組など、子の身分に重大な影響を及ぼす法律行為を代理する権利
これらの権限は監護者にはなく、親権者に留保されます。
親権と監護権を分けるケースと留意点
親権と監護権の分離は、以下のような場合に検討されることがあります。
- 父母の一方は子の監護に適しているが、財産管理能力に不安があるため、財産管理は他方の親に任せたい場合
- 離婚に際して父母双方が親権を譲らず対立している場合に、妥協的な解決策として利用される場合
一方で、親権と監護権の分離には慎重な判断が求められます。分離が有効に機能するためには、父母間に円滑な協力関係があることが大前提です。協力関係を取ることができない父母の間で親権と監護権を安易に分離すると、かえって新たな紛争の火種となる可能性が高いため、原則としておすすめできません。裁判所も、子をめぐるトラブルの続発を避けるため、特段の事情がない限り親権と監護権の分離には消極的であるといえます。
監護者を定める手続き
監護者を定めるには、まず父母間の協議によって行います。協議がまとまらない場合や協議ができない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てて定めてもらうことになります。
上述のとおり、改正民法(令和8年4月1日施行)で離婚後の共同親権が導入されましたが、監護者を別途定める制度も子の養育の一つの選択肢として残されています。子の利益を最も優先するという観点から、父母の関係性や協力の可能性などを十分に考慮し、共同親権か単独親権か、監護者を別途定めるか、監護の分掌を行うかなど、子の福祉にとって最も適切な形を慎重に選択することが重要です。

