婚姻費用
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が子どもを含めた婚姻共同生活を営む上で通常必要となる費用のことであり、衣食住の費用、医療費、子どもの養育費・教育費などが含まれます。民法は、夫婦が各自の資産、収入その他一切の事情を考慮して、これを分担することを定めています。
婚姻費用分担義務の性質
婚姻費用分担義務は、夫婦間の扶助義務に基づく、自分の生活を保持するのと同程度に相手の生活を保持させる義務(生活保持義務)であると考えられています。
婚姻費用額の算定方法
婚姻費用は、裁判所が公表している算定表を用いて算定されます。裁判所が公表している算定表では、年収や子の人数・年齢に応じた標準的な額が「幅」(概ね2万円)をもって示されており、個別事情はこの幅の中で考慮されるのが原則です。この算定表は、標準算定方式という算定方法をもとに作成されています。
標準算定方式の考え方
権利者・義務者双方の総収入から、公租公課、職業費(就労に必要な経費)、特別経費(住居費、保険料等)を控除して「基礎収入」を算出します。その後、世帯全員が同居していると仮定した場合の生活費を、生活費指数(親を100、子を年齢に応じ62または85とする)を用いて按分し、分担額を導き出します。
高額所得者における婚姻費用の算定
義務者の年収が算定表の上限(給与所得2000万円、自営業1567万円)を超える場合、以下の手法が検討されます。
- 算定表の最高額を上限とする方法
- 基礎収入の割合を通常より少なく修正する方法
- 基礎収入から貯蓄率を控除する方法
- 同居時の生活水準や支出状況から実額を認定する方法
収入の程度や生活状況に応じ、事案に応じた妥当な婚姻費用の額を導き出すことが重要です。
個別事情による調整要素
住宅ローンの負担
義務者が権利者の居住する自宅のローンを支払っている場合、その住居関係費を婚姻費用から控除することがあります。ただし、支払額全額を控除するのではなく、双方の収入や標準的な住居費等を考慮した調整が行われます。
教育費
子どもが成人に達していても、大学在学中などで未成熟子と認められる場合は婚姻費用の対象となります。私立学校の学費や塾費用についても、親の学歴や進学への支援状況、収入格差に応じて分担が命じられる事例があります。
婚姻費用の取決め方
まずは夫婦間の協議により定めます。協議ができない、または調わない場合は、家庭裁判所へ婚姻費用分担の調停または審判を申し立てます。審判となった場合、家庭裁判所は、双方の主張を検討して、具体的な分担額を決定します。
婚姻費用の支払期間
支払開始時期は、原則として、請求時になります。実務上は、婚姻費用の調停申立時が多いです。
支払終了時期は、離婚の成立または別居解消(同居再開)までとなります。
未払婚姻費用の扱い
離婚時に未払の婚姻費用がある場合、財産分与の手続の中で清算の対象として考慮されることがあります。
事情変更による婚姻費用の増減額請求
一度決まった婚姻費用であっても、当時予見できなかった事情の変化(収入の変動、家族状況の変化等)があり、従前の額を維持することが著しく不公平な場合には、増減額を求めることができます。

