財産分与
離婚の際に夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を清算するための制度です。令和6年の民法改正(令和8年4月1日施行)により、財産分与の目的が「当事者間の財産上の衡平を図るため」であることが明記され、考慮すべき要素が具体的に法律上例示されました。また、実務上定着していた「2分の1ルール」が明文化されるとともに、財産分与の請求期間が離婚時から「5年」に延長されました
財産分与の意義と法的性質
財産分与は、主に以下の3つの性質を包含すると解されています。
- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
清算的財産分与
清算的財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を清算するもので、財産分与の中心となります。
扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚によって生活が不安定になる側に対し、自立までの生活費を支給するなど、離婚後の生活維持を図るものです。
慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、離婚の原因を作ったことへの損害賠償的要素を含めて財産を分与するものです。
令和6年改正による考慮要素の明確化
改正民法では、家庭裁判所が分与を定める際の考慮要素として以下の事項を明示しています。
- 当事者双方が婚姻中に取得し、又は維持した財産の額
- その取得又は維持についての各当事者の寄与の程度
- 婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況
- 各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入、その他一切の事情
これにより、どのような事情が考慮されるのかが従来よりも明確化されました。
「2分の1ルール」の明文化
改正民法では、婚姻中の財産形成への寄与の程度について、「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と規定されました。これは、専業主婦(主夫)であっても家事育児による貢献を評価し、原則として2分の1の割合で分与するという実務上の「2分の1ルール」を成文化したものです。
ただし、以下のような場合にはこのルールが修正されることがあります。
- 特殊な技能・努力
医師など、婚姻前の個人的努力や特殊な才能により高額な収入を得て多額の財産を形成した場合には、分与の割合が修正されることがあります。 - 寄与の偏り
一方のみが収入を得て家事育児も担っていた場合など、貢献度が平等とできない事情がある場合には、分与の割合が修正されることがあります。
財産分与の対象となる財産の範囲
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象財産は、名義の如何を問わず、婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産です。
婚姻後に取得した不動産、預貯金、自動車、生命保険(解約返戻金)、株式、有価証券、退職金などが該当します。
財産分与の対象とならない財産
婚姻前に所有していた財産や、婚姻中であっても相続や贈与によって取得した財産(特有財産)は、夫婦が協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象財産とはなりません。
負債の扱いについて
住宅ローンなどの、夫婦の婚姻生活のための負債は、財産分与の際に考慮されることになります。
財産分与の基準時と評価
財産分与の基準時
夫婦の経済的協力関係が終了した際の財産が、財産分与の対象財産となります。実務上、別居時とされる場合が多いです。
財産の評価の基準時
不動産や株式など価値が変動する資産については、審理終結時(口頭弁論終結時)と考えられています。なお、当事者間で、一定の時期の評価を基準とすることを合意することもあります。
財産分与の方法
不動産、株式などの財産を売却して分与する方法や、一方が財産を取得して他方に代償金を支払う方法、特定の財産をそれぞれに割り当てる方法などの方法があります。
財産分与の請求期間
改正前民法では、財産分与の請求期間は、離婚後2年でしたが、改正民法により、令和8年4月1日以降に離婚が成立した場合の請求期間は、5年に伸長されました。ただし、施行日前に離婚した場合には、原則として従前どおり2年のままであるとされています。
財産情報の開示命令
改正法により、財産分与審判などの裁判所が関与する手続きにおいて、家庭裁判所が当事者に対して財産情報の開示を命じることができる制度が導入されました。これにより、分与対象財産の把握がスムーズになることが期待されています。
財産分与の進め方
まずは当事者間での協議から始めることが一般的です。そもそも話合いを行うことが難しい、話合いを行っても合意に至らないなどの場合には、家庭裁判所での「調停」や「審判」の手続を検討します。なお、離婚訴訟が係属している場合には、その附帯処分として財産分与を申し立てることも可能です。

