養育費
養育費とは、子が経済的・社会的に自立するまでに要する監護・教育費用(衣食住、教育費、医療費等)を指します。離婚により親権者でなくなった親であっても、親であることに変わりはなく、支払義務を負います。
民法817条の12第1項(親の責務等)は、父母が子に対して負う扶養義務の程度について、「その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない」と規定しています。このような義務を、生活保持義務といいます。
養育費の算定方法
養育費は、裁判所が公表している算定表を用いて算定されます。これは義務者と権利者の年収を軸に、子の人数と年齢(0〜14歳、15歳以上)に応じて算定するものです。この算定表は、標準算定方式という算定方法をもとに作成されています。
標準算定方式の考え方
義務者の基礎収入、権利者の基礎収入、および子の生活費指数(親を100とした場合、15歳未満は62、15歳以上は85)を用いて按分計算を行います。子どもが私立学校に通っている場合や、高額の医療費がかかる場合などの事情がある場合には、養育費の額が調整されることもあります。
養育費の取決め方
まずは父母間の協議により定めます。協議ができない、または調わない場合は、家庭裁判所へ養育費調停または審判を申し立てます。審判となった場合、家庭裁判所は、双方の主張を検討して、具体的な養育費の額を決定します。
養育費の支払期間
子が「未成熟子」でなくなるまで継続されます。子が未成熟子に該当するかどうかは、単に年齢(成年に達しているか否か)だけで判断されるのではなく、子の経済的自立の有無、父母の経済状況、社会的地位、学歴等の個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。
例えば、大学生であり自立できない場合には、義務者の学歴や収入、進学の承諾等の事情を考慮して、大学卒業時まで養育費支払義務を認めることもあります。
過去の養育費については、原則として請求した時(調停申立て時等)からとされていますが、認知した子の養育費について、出生時からの養育費の支払いが認められた例もあります。
事情変更による養育費の増額・減額請求
養育費の合意当時の前提事情に変更があった場合、家庭裁判所は額を変更できます。
事情変更の例
- 収入の変動
当事者の大幅な減収や失業、収入増などがあった場合に、事情変更があったとして、養育費の増減が認められると考えられます。 - 再婚・養子縁組
義務者が再婚し新たに扶養家族が増えた場合や、子が権利者の再婚相手と養子縁組をした場合などが含まれます。
改正民法(令和8年4月1日施行)による新しい制度
法定養育費
離婚時に養育費の取決めをしていない場合でも、離婚のときから引き続き子を監護する親は、他方に対して一定額の養育費を請求できるようになりました(法定養育費)。
法務省令で定める法定養育費の基準額は、月額2万円×子の数として算定されます。なお、法定養育費の始期、法定養育費の終期には、日割計算を行うことになります。
なお、法定養育費は、あくまで養育費の取決めがない場合の暫定的な金額として位置付けられており、父母間の合意や家庭裁判所の審判によって定められる養育費とは別の制度です。
先取特権の付与
養育費債権に「先取特権」が付与され、公正証書などの債務名義がなくても、一定の文書(養育費の合意書など)に基づき差押えの申立てが可能となります。先取特権が認められる額は、子1人あたり月額8万円です。

