離婚についての知識knowledge

財産分与

財産分与とは

離婚に伴って、婚姻中に形成した財産(夫婦の共有財産)の清算や離婚後の扶養等を処理する手続のことです。
財産分与について、当事者間で協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることになります。調停が不成立になると、審判手続きで必要な審理がされたうえで、審判がされます。
裁判離婚において、財産分与を決定する場合もあります。

裁判所に対する財産分与の申立ては、離婚の時から2年以内でなければ、することができないので注意が必要です。
財産分与には、①夫婦が婚姻中に協力して蓄財した財産の清算、②離婚後の経済的弱者に対する扶養料、③相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされたことについての慰謝料という3つの要素が含まれています。

対象財産の範囲

総論

婚姻中の財産には、①特有財産(夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や、婚姻後に相続や贈与で取得した財産)、②共有財産(名実ともに夫婦の共有に属する財産)、③実質的共有財産(名義は一方に属するが、夫婦が協力して取得して得られた財産)の3つがあります。
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、夫婦の共有財産と推定されます。
なお、広島高判昭和55・7・7は、いわゆる共働き夫婦間の財産分与申立事件において、婚姻後取得した財産は名義のいかんを問わず、すべて夫婦の共有財産であると認めております。
また、子どもの名義で預金を貯蓄していた場合、預金は、夫婦の共有財産となります。財産分与の対象となるのは、②共有財産及び③実質的共有財産です。①特有財産は、財産分与の対象にはなりません。

将来の退職給付金については、数年後に退職し、その時点の退職給付金の額が判明している場合に限り、財産分与の対象とすることができます。なお、分与される額は、原則として実質的な婚姻期間(同居期間)に相応する部分に限られます。分与できる財産がない場合(債務しかない場合や、積極財産から債務を引いてプラスがない場合)には、財産分与の請求権は生じません。調停において、当事者間で債務の負担について合意をすることはできます。

別居時に配偶者から持ち出された財産

夫婦の一方が本来の分与相当額を超える分与対象財産を持ち出した場合、単に財産分与の申立てを退けるのではなく、申立人から財産分与の申立てをしていない相手方への分与を認めている裁判例があります。
また、持ち出した財産が将来の財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的で持ち出したなどの特段の事情がない限り、違法性はなく不法行為とならないとした裁判例もあります。

第三者名義の財産

会社が個人経営の実態を有する場合における会社財産、夫の実家の家業に相応の報酬を受けずに従事していた場合における、右家業により形成された夫の父親の財産も分与の対象となります。ただし、これらの場合には、分与の対象が第三者名義であるので、分与義務者に対して金銭的な清算を義務づけるほかありません。

財産分与と過去の婚姻費用

夫婦の一方が婚姻費用分担義務を果たすことなく離婚に至った場合は、他方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の額及び方法を定めることができます。

分与対象財産の範囲の基準時

原則として、別居時の財産を基準とします。

分与の割合

財産分与は、原則として、別居時又は離婚時の夫婦の共有財産を、2分の1ずつ分けることになります。
財産分与の割合は原則として2分の1ずつですが、夫婦の共有財産の形成・維持管理に特別に寄与・貢献したといえる方に、割合が多く認められることがあります。(ただし、特別な寄与・貢献の度合いを裏付ける資料が必要になります。)
不動産など、譲渡所得税がかかる財産については、税金がいくらかかるのか注意が必要です。

不動産の分与

共有不動産の清算が問題となる場合としては、①不動産が夫婦の一方配偶者の単独名義である場合と、②夫婦共有名義の場合があります。
①については、配偶者の一方の名義であっても清算すべき実質的共有財産かどうかが問題となります。例えば、名義は一方の配偶者ですが、実際には夫婦双方が住宅ローンを返済している場合です。
②については、ア 従前から夫婦の共有名義となっているが婚姻生活が長期にわたり、財産の形成・維持に対する寄与の程度により当初の共有持分とずれてくる場合に問題となります。この場合にも実質的共有持分の割合について争いが生じることになります。さらに、イ 登記簿上の共有持分に争いはないけれど、清算方法に争いがある場合も問題となります。

①や② ア の場合には、実質的共有持分の割合を決める必要があるため、財産分与手続で処理することが妥当といえます。一方の配偶者の親が頭金を支払っている場合等については、一方配偶者の実質的持分を判断するに際して考慮することとなります。② イ については清算方法についてのみの争いがあるにすぎないため、財産分与手続以外に共有分割手続も選択可能です。

不動産に抵当権が設定されている場合

婚姻中に取得した不動産に、分与時点で住宅ローンの残債務が残っているときの不動産価額の評価方法については、分与時点における不動産の時価からローンの残元金を控除する方法で、清算の対象としての不動産価額を決定するのが一般的です。
なお、抵当権付不動産の価額を、既払額のうち元金充当分の合計額であると評価する裁判例もあります。
分与方法については、親族からの資金援助による方法、どちらかが不動産を取得して住宅ローンの返済を続ける方法もありますが、金銭的な余裕がない場合には、不動産を売却する方法により売却金額を財産分与することになります。どちらかが不動産を取得して住宅ローンの返済を続ける場合において、住宅ローンの債務者でない者が債務を引き受けたとしても、金融機関が債務者変更に応じることは、通常ありえません。妻側からの連帯保証人の解除の要望も多いですが、債務者変更同様、金融機関から新たな担保、連帯保証人の追加を求められるため、実現困難なことが多いです。

オーバーローン不動産の分与

不動産を売却する方法により財産分与をするとしても、ローン途中の不動産は多くの場合、不動産の時価より住宅ローンの残債務額の方が大きい、いわゆるオーバーローンの状態であることが多いです。
このように、実質的には不動産に資産価値がない場合には、財産分与にあたり大きな問題が生じます。オーバーローン住宅だけが資産で、他にプラスの資産がない場合には、債務者でもなく、連帯保証人でもない配偶者の場合には、財産分与を求めない方法もあります。
オーバーローン状態であっても婚姻生活中に支払ったローン金額を財産分与として求めることも考えられますが、東京高決平成10年3月13日においては「夫婦の協力によって住宅ローンの一部を返済したとしても、当該住宅の価値は負債を上回るものではなく、住宅の価値は零であって、右返済の結果は積極財産として存在しない。そうすると、清算すべき資産がないのであるから、返済した住宅ローンの一部を財産分与の対象とすることはできないといわざるを得ない」と判示しています。

退職金の分与

分与者がすでに退職金を受給している場合には、退職金受給の事実を踏まえて分与額を決定することになりますが、将来において支給される場合には、会社の存続、経営状態、本人の退職理由、時期等の不確定な要素により左右されることから、そもそも清算の対象となるのか問題となります。近時の判例は、賃金の後払い的性質を理由に、清算的財産分与の対象としているようです。
なお、その清算方法については、以下のようなものがあります。

① 離婚時点で任意に退職すれば支給されるであろう退職金の額を支給の時点で清算の対象とするもの
② 将来の退職金額自体を現時点で清算の対象とするもの
③ 将来支給されることを条件として清算の対象とするもの
金額は、退職金総額× (婚姻期間÷退職金基準期間)÷2が原則です。原則としては婚姻期間を基準としますが、同居期間相当分だけを分与の対象財産とし、別居期間に相当する分を分与の対象から除いた裁判例もあります。

負債

日常家事債務を除いて、夫婦の一方が負担した債務を他方が責任を負うことはありません。仮に、夫婦問で負担割合を決めても債権者との間では何らの効力もありません。
ただし、負債が夫婦共同生活の中から生じたものであるときは、積極財産から消極財産を差し引いた純財産を計算して残財産額を夫婦問で清算額として決定するのが一般的です。
婚姻中に形成された財産が全くなく、債務のみが残存する場合に、債務のみの財産分与が認められるどうかは、認められないとする裁判例があります。